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<更年期障害・ホットフラッシュについて>
国広敦志
(患者)50歳 女性 職業 医療事務の講師
(初診)平成26年 6月 12日
(主訴)更年期障害によるホットフラッシュ様症状
(望診)身長 164cm 体重 54kg
皮膚・・・下腿は色(いろ)白(じろ)く柔軟性がある。 顔面は青白く生気がない。
(聞(ぶん)診)五音はわかりませんでした。
(問診)
睡眠・・・一日5時間程度、夢を見る事も少なく、よく眠れている。
食欲・・・一日三回、美味しく食べれている。
便 ・・・安定はせず、3日に一回と便秘気味。
→5、6年程前より一日に三回程度、何の前触れもなく、顔面部及び頭頂部に、まるでお風呂上りの様な大量の汗をかくようになる。同居している盲目の母の介護の疲労感は常に感じており、また講師の仕事がら人前で話す時に、その症状が出現すると、恥ずかしさを感じる。年齢、症状から更年期障害の一症状「ホットフラッシュ」と酷似(こくじ)しており、積年の悩みを解決するため来院した。また頸肩部から肩甲骨にかけてのこりはきつく、右手手部までの痺れ感もあり、最近視力の減退も感じる。話をしていると時折眉間に皺が寄る。全体的に線が細く神経質な性格と感じ取れ、講師として教鞭(きょうべん)に立つ時、慣れない生徒がいるクラスでは、過度の緊張をするとのこと。アルコールは嗜む程度、たばこは一日15本、スポーツは特にしていない。
(既往歴)幼少期に転落による右肘部(ちゅうぶ)複雑骨折。
(切診)尺膚や下腿の表面は、柔らかいが筋肉はしっかりとしている。
頸部にて天柱穴・風池穴、肩井穴、及び肩甲骨内側に指で押圧すると筋(すじ)張った硬結がある。腰部は腸骨上部から外側にも硬さを感じる。
(脈診)六祖脈は浮・数・虚。脈は全体に輪郭なく、浮いて開いてくる脈状。押圧すると力無くつぶれる。
左手関上 肝の脈 輪郭なく浮いて開いて最も、虚。
左手尺中 腎の脈 力なく浮いて開いて、虚。
右手寸口 肺の脈 遠心性でバンバンと突き上げる感じ、実。
右手関上 脾の脈 指に当たる感じ、実
他は平と診ました。
(腹診)
:全体的に軟弱でそうりも荒い。
:左帯脈穴より居りゅう穴にかけての肝の診所・・・圧すると力無く沈み、最も、虚。
:陰交穴より恥骨上際にかけての腎の診所・・・力無く、虚。
:臍を中心としてその下一寸、陰交の部より大腹、中かん穴の上にかけての脾の診所・・・指先に硬さが触れ、実。
:右季肋部の日月、腹哀穴よりやや斜めに臍の右に及ぶ、肺の診所・・・張りがあり、実。
:他は平としました。
(証決定)
以上 脈診、腹診、その他を総合的に判断し、証(あかし)は肝虚陰虚症としました。
(治療方針と予後の判定)
特に病状に付随する既往歴も無く、経絡治療により虚実をわきまえ補寫調整することにより生命力を強化し、治癒に導く事が出来ると思い、予後は良としました。
(治療)
〈本治法〉
関節や筋肉の痛みは、あまり訴えることも少なく、ホットフラッシュ症状が一日三回という、言わば全身症状が主訴であることから
本治法は雑にならないように、脈状を確認しながら治療を進めました。気虚であるイライラ・頭痛・顔面紅潮など肝気上(じょう)逆(ぎゃく)の症状が見られるが、本治法で陰経をしっかり補うことで、症状が改善出来ることを信じ、患者には症状の変化が乏しくても三か月は治療を続ける様通院指導しました。
:銀一寸3番鍼にて左太衝穴に和(わ)法(ほう)を行い、検脈するとあまり変化が見られない為、今度は姿勢保持、リラックスと、そして催気を慎重に行い太衝穴を再度アプローチしましたが、浮いて開いてくる脈状は、少し流れが良くなった様に感じましたが、あまり変化がないように思いました。次の曲泉穴、陰谷穴は脈状を確認しながら、抵抗に当たった所で催気、抵抗が緩んだ所で抜鍼し、鍼口を閉じる補法(ほほう)を行いました。施術後に再度検脈も、変化率の悪い脈状だと思い豊隆穴、光明穴に氷を解かすイメージで、補中の瀉の手技を行い、徐ろに抜鍼し検脈したが、依然として脈状の変化は悪いままでした。
自分では丁寧に本治法をしたつもりでしたが、初診なのでドーゼオーバーが気になり深追いせず、標治法に移ることにしました。
〈標治法〉
腹臥位になり、ステンレス寸3・3番鍼にて奥の硬結を引っかける様に頸部天柱、風池、肩井、肩中兪、肩外兪、腰部硬結部、腎兪、大腸兪、志室、腰眼にて深寫浅補しました。肩部は、かなりの緊張と根を張った様な硬さがありましたが、施術を進めると、緩みを感じることができました。背部置鍼として隔・肝・脾・腎へ施術し抜鍼後、検脈するもあまり変化はなく、一回目の治療は終了しました。
(2回目) 6月19日
前回終了後、脈状(みゃくじょう)の変化が出せず、心配していたがホットフラッシュ様症状は一日三回が、一日一回に減少し、本人も明るい表情を見せている。しかしバーゲン会場や満員電車で大量に汗が出るといった症状が出現する。検脈すると、浮・数・虚。前回よりも、やや脈が指についてくる様な力があり、脈に輪郭が出ているのを確認するが、まだまだ虚熱があるのか、脈全体に浮いている感じはしている。触診時に太衝穴、陰(いん)谷(こく)穴を押圧(おうあつ)すると、本人より「その辺が嫌な感じがする」と前回にない反応の申し出があり、刺入深度には硬結を逃がさない様に、十分気を付ける様に心掛けた。初診時では脈状の変化があまり出せなかった事を反省し、補助療法として・・・気逆の症状では陰経を補う事が著効(ちょこう)であることから、肝気上(じょう)逆(ぎゃく)の主治穴である、太衝、中封、内関、大敦のうち反応の良い中府、内関の施鍼を追加し挽回を図ることにする。本治法、標治法終了後、仰臥位になって頂き、触診を指先の一点で丁寧に行い、その中で一番虚している穴(けつ)に、ステンレス寸3・3番鍼にて置鍼10分施術(せじゅつ)。抜鍼後、検脈すると左手関上、尺中の脈が力強く指先に触れる様になった。
(3回目)6月28日
ホットフラッシュ様症状は一週間に2回と順調に減少している。汗のかきかたも、急に吹き出る様な感じから、ジワーと染み出る感じに変化する。満員電車で大量の汗もかかなくなる。肩頸部の硬さも柔軟になっているとのこと。補助療法の追加が良かったのか検脈すると輪郭も出て来て、脈も伸びが出てくる様になるのを確認する。ただ長年の便秘症状は改善されていないが、患者本人からの経穴の反応はますます良くなっている。前回同様に補助療法、中府、内関の置鍼の手技まで行い治療終了する。
(5回目)7月17日
ホットフラッシュ様症状は消失、前回から一週間、顔面部から頭頂部までの突発的な汗は一度もかかなくなった。特に授業でのストレスが楽になるとか、私生活に大きな変化もなく、いわゆる普通に汗をかくだけとのこと。検脈すると浮・数・虚。やや浮いた感じではあるが初診時より脈状に力強さがでている。
(6回目~(から)10回目) 7月25日~9月1日
症状は相変わらず調子の良さを継続している。脈状は浮・数・虚。
初診の主訴である「ホットフラッシュ」は消失し、本人も少しずつだが、人前で汗が噴き出る事を忘れてきており、頸肩部から肩甲骨にかけてのこりと、右手手部までの痺れは緩解したが、便秘症状は全く改善しないのが気になる。九月の末にある同窓会にも安心して行けると喜んでいる。補助療法は継続して施術している。初診時の脈状は浮・数・虚であり、脈は全体に輪郭なく浮いて開いてくる脈状が締まりを感じ、水が流れる様になる。輪郭も徐々にわかる様になる。脈を押圧すると力無くつぶれる状態が、幅が出て抵抗を感じる様になる。顔つきも明るくなり、発する言葉も前向きな発言が多くなっている。今後は2週間に一度来院し脈状の確認と全身調整を基本とした治療を望まれ完治とした。
考察
この症例を通じて感じたことは、漢方(かんぽう)鍼灸(しんきゅう)臨床(りんしょう)研究会に入会する以前なら、治癒に時間が掛かった症例も、脈診・本治法・標治法をきちんと施術することにより、効果的に短時間で治癒に導くことが出来る、ということでした。また補助療法を取り入れることにより、患者さんの容体が改善傾向になる事を実感しました。患者さん自身も治療に対して反応も良く、インフォームドコンセントを初診できっちりしたことも功を奏したと思われます。治療は技術以外にもドクターモード、信頼関係が深く関わってくると痛感致しました。相反して検脈力の無さ、東洋医学的見地における、患者説明力の弱さを認識することが出来、それら二つの力を磨くことが今後の目標となりました。また治療二回目より時には肝病証、腎病証と病証に悩みましたが今まで、先生方や諸先輩方に指導を受けた言葉や講義の内容を思い出しながら、患者さんの治療経過をみることで、試行錯誤をしながらも良い結果に結びつけることができました。こうして発表させて頂く事が出来るのも指導者の先生や諸先輩方の治療に対する熱い思いがあったからこそだと考えております。これからもまだまだ未熟な私ですがご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。
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